A-1:事例要因分析から改善へ −輸液ポンプを事例として 
    (Medical-SAFERによるRCA)

講義タイトル

情報処理モデルを使った背後要因の推定の考え方

講義のねらいと概要

ヒューマンエラー事象分析手法を学ぶうえで最も重要なことは手順を理解することではない。エラー分析に必要な見方・考え方を理解することである。
エラーとは人間の持っている諸特性と環境との相互作用の中である行動が決定され、その行動がある期待されたものから逸脱したものである。したがって、当事者はなぜそのような行動をとったか?ということを明らかにすることが最も重要である。たとえば、当事者が思い込みである行動を決定した場合、思い込みをするまでに至る仕事の流れや当事者の受けてきた教育、あるいはその職場の慣習といった背後要因を明らかにすることが極めて重要である。
エラーには言い間違いに代表されるスリップや記憶や判断の関係したミステイクなどがある。本講義では主にミステイクに焦点をあて、理解に役立つと考えられる人間の情報処理モデルや状況認識モデルを分かりやすく説明する。そして、モデルを参考に、なぜこの当事者はこの行動をとったのか?について背後要因を推定することを試みる。
実習ではMedical SAFERを用いて、輸液ポンプに関する事例をグループで分析する。分析結果を各グループに発表してもらい、再発防止への方策を、参加者もいっしょになって考え、議論する。
この一連の講義と実習を通じて、医療システムが潜在的に抱えている問題を少しでも改善するための見方・考え方についての理解を最終目的とする。

講師

○河野龍太郎(自治医科大学医学部 メディカルシミュレーションセンター センター長)
○杉山良子(武蔵野赤十字病院 医療安全推進室 看護師長)

企画担当者: 河野龍太郎