社団法人 日本臨床衛生検査技師会 専務理事 金子健史
当会では厚生労働省が推進している「医療安全推進週間」の一環として、医療安全対策に関する臨床検査技師の意識向上をはかるため、平成13年度からこの事業に取り組んできています。
本年は、臨床検査をとおし国民へ質の高い安全な医療を提供するために「医療安全学」を研鑽し、医療事故被害家族からのメッセージを受けて、医療安全対策の重要性を認識するとともに、当会が策定する医療安全管理指針による取り組みを明確にし、その実践を周知徹底することを目的とした「臨床検査安全管理者研修会」を開催しました。
平成22年1月22日、大森東急インにおいて開催した「平成21年度臨床検査安全管理者研修会」の内容は以下のとおりです。
◇「薬剤耐性菌による院内感染対策について」
国立感染症研究所 細菌第二部長 荒川宜親先生
◇「EPINET(日本版)の解析−臨床検査技師の針刺し・切創事故−」
(財)労働科学研究所教育・国際協力センター 副所長 吉川徹先生
◇「家族が事故にあった病院で働く決心−医療事故被害家族のお話−」
阪南中央病院 患者情報室 北田淳子先生
◇「採血業務に伴う安全管理」
慶應義塾大学附属病院 中央臨床検査部次長代理 柴田綾子先生
◇「インシデントレポートの現状と活用」
JA静岡厚生連・遠州病院 検査科技師長 伊藤喜章先生
◇「医療安全危険予知トレーニング(KYT)の薦め」
北里大学東病院 看護部長 花井恵子先生
荒川先生は、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌をはじめとする今後警戒すべき新型薬剤耐性菌を講義され、新情報修得の必要性を強調されました。
吉川先生は、血液媒介感染症の職業感染予防には、標準予防策の遵守と感染経路別予防策の実施が重要であり、その針刺し対策研究に大きな役割を果たしてきたサーベイランスシステム(EPINet)について話されました。
北田先生は、家族を医療事故で亡くされた経験を紹介され、現在その病院に働き患者や家族とどのように向き合っているかを話されました。
柴田先生は、JCCLSが標準採血法ガイドラインを策定した経緯を話され、針を刺すという侵襲を伴う「採血」は、技術を提供するというスペシャリストとしての自覚を持ち、採血に関する知識と技術の研鑽が必要と強調されました。
伊藤先生は、勤務される病院のインシデントレポートの詳細を紹介され、その活用法を示されました。ミスは人が生きている証拠であり、生きているからこそ努力し、その結果出たミスはさらなる勉強、すなわち成長につながるとされました。
今後も研鑽の機会を設け、医療安全への取り組みをよりいっそう深めていきたいと考えています。
10/02/12