Institute for Healthcare Improvement (IHI) 20th National Forum for Quality Improvement in Health Care International Attendee Meetingの報告
医療の質改善研究所の第20回医療の質改善全国フォーラムが12月8日から11日まで米国ナッシュビルにて行われました。
同フォーラムには全米の病院から5000人以上が参加したほか、世界40カ国から600人以上が参加して各国の医療安全の取り組みを交流する国際セッション―International Attendee Meeting: 12月8日(月)−も開かれました。
開会にあたって、D.バーウィック氏から各国の取り組みを激励するメッセージが述べられました。同国際セッションについて報告します。
会議事項・発表 | 進行役 | |
8:30 - 8:45 |
開会Welcome and Introductions |
Laurel Simmons |
8:45 - 9:10 |
Icebreaker |
Helen Bevan |
9:10 - 10:40 |
各国のキャンペーンの紹介
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Goran Henriks and guest speakers |
10:40 - 11:05 |
ディスカッション |
Goran Henriks |
11:05 - 11:45 |
Social Movements(社会運動) |
Helen Bevan |
11:45 - 12:00 |
閉会の言葉 |
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12:00 |
閉会 |
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発表内容の要約
米国のキャンペーンの浸透:4年間のキャンペーンと大規模な改善の教訓
Joe MaCannon氏(IHI)
米国の“500万人のいのちをまもるキャンペーン”の経過につき報告する。現在までに4000近い病院が参加し(米国の全病床の75−80%)、8つの州では100%の病院が参加、18州でも90%以上の病院が参加した。結節点(ネットワークの基点・中心点となるフィールドオフィース)が50州すべてに存在(あわせて62の結節点)し、195のメンター病院ができた。全国電話会議への参加率も高かった(1回の電話会議で250−500ライン)。地方のグループ・小児科関連のグループ等の活動の活性化、5000万件のメディアへの出現を達成した。米国のキャンペーンの成功の秘訣は、国内ネットワークが活発になったことであった。
5Mキャンペーンの次をどうするかという議論する時期に来ている。それには、病院が必要としていること、我々が大規模改善活動により学んだこと、実現可能であるとわかっていることなどを考慮しなければならない。
“Operation Life” デンマークのキャンペーン報告
Beth Lilja (Danish Society for Patient Safety)
デンマークでは、人口550万人で38の病院が存在する。2007年4月にOperation Life という名のキャンペーンがはじまった。24ヶ月の間に3000人の命を救うことを目標としている。介入は米国100Kと同じ内容である。参加病院は全国の75%の退院患者を占めた。
キャ ンペーンの成果は全国レベルと地域レベルの指標を用いた。全国レベルの指標としては、「救うことのできた命の数」、「病院標準化死亡比」、「キャンペーン ウェブサイトへのアクセス数」を用いた。ローカルレベルの指標としては、介入へのコンプライアンスを表す指標と各介入のアウトカム指標を用いた。現在まで に1000人以上の命を救うことができたことがデータにより示されている。
北アイルランドの取り組み
HSC Safety Forum
Noleen Devaney (Director)
北アイルランドの人口は約170万人。HSC(Health and Social Care)が統合されたケアを提供する。現在、4つの医療圏と、5つのトラスト(医療・社会保健組織)が存在する。
2001年より医療の質改善に対する様々な取り組みがなされている。2004年から2008年にかけては英国のHealth Foundation によるSafer Patient Initiative (SPI) にも参加した。北アイルランドでは、政府が医療安全のプライオリティー(優先事項)を定めた。2007年から2008年は ”Learning Year”とされ、改善の方法のメソドロジーを学ぶ機会がトラストに与えられた。具体的には、3つのエビデンスに基づいた介入がすすめられたが、介入を進めるのが難しいことがわかり、各トラストをサポートする機能を持つ、Safety Forumが2007年6月に作られた。
HSC Safety Forum の役割は、
- オープンなラーニングカルチャーのもと、より安全なケアを提供できるよう、各組織をサポートする。
- 国際的に認識されている理論や介入方法に合致した、質改善のためのキャパシティーを作り、発展させる。
- キーとなる関係者と協力する。
- Safety Forumは行政機関ではなく、HSCの組織を動かす権限はないが、HSCの組織がより高いスタンダード・安全な医療を提供できるよう、サポートするために存在する。
日本の医療安全全国共同行動“いのちをまもるパートナーズ”の報告
種田憲一郎/千原 泉
日本の医療安全全国共同行動が始まったこと、その背景、組織体制、行動目標の内容につき、プレゼンテーションを行った。また、第1回全国フォーラムの報告を行った。
発表後、ロゴマークがとてもよいと言ってくれた人がいた。また、韓国人、カナダ人、ウェールズの人などが日本の取り組みに興味を持ち声をかけてくれた。
社会運動(Social movements)の理論を医療の質改善に取り入れる
Helen Bevan(英国)
“社会動員(Social mobilization)”の改善は「エネルギー」に焦点をおく。すなわち、想像力、関心、参加、動かすこと、動員することなどがキーワードとなる。
医療の質改善を考えるとき、我々はもっと社会運動・社会動員の思想から学べばよりよいケアを患者に与えることができるのではないか。
英国のNHSでは、社会運動より学び、劇的な変化のための5つの法則を取り入れることを考えてきている。すなわち、
- 人々の心と考えにつながるように、描写する。
- 行動のために、人々を活気づけ、動員する。
- 変化・前進ができるように、まとめる。
- 変化を起こすことを、個人的な使命とする。
- 得たもの・勢いを持続する。
運動はどこからエネルギーを得るか?それは、理性(よい理由、納得できる事象)、感情(人々の感情に訴えることができるか)、社会(社会的結束力、社会的責任感の程度)、行動(活発な参加の程度)、組織(組織構造が人々が信じること、価値観にどの程度あうか)による。
(報告者 種田憲一郎/千原泉)