行動目標W 医療従事者を健康被害からまもる
近年、医療従事者が抗がん剤に曝露されている可能性についての懸念が高まり、また、従来から医療従事者がケアの現場でさまざまの感染性病原体に曝露され、時に、罹患・発症している事例が少なからず報告されています。医療従事者が安心して働ける環境を確保すること自体が安全な医療を提供するための大前提であるだけでなく、職員の安全を重視する組織文化が患者の安全に寄与するとの考えに基づいて、行動目標として取り上げました。具体的には、当面「抗がん剤曝露のない職場環境を実現する」(行動目標W1)、「感染症の拡散を防止する院内手順を遵守する」(行動目標W2)を取り上げます。
(1)抗がん剤曝露のない職場環境を実現する
[目標] 医療従事者が抗がん剤に曝露されることを防ぐ
[推奨対策]
1.調製時の吸入曝露防止のために、室外排気型の安全キャビネットを設置する
2.取り扱い時の曝露防止のために、閉鎖式接続器具を活用する
3.取り扱い時におけるガウンテクニック(PPE: 呼吸用保護具、保護衣、保護キャップ、保護メガネ、保護手袋の着用)を徹底する
4.取り扱いに係る作業手順(調剤、投与、廃棄等におけるばく曝露防止策を考慮した具体的な作業方法)を策定し、関係者へ周知徹底する
5.取り扱い時の吸入曝露、針刺し、経皮曝露した際の対処方法を策定し、関係者へ周知徹底する
6.環境曝露の事前の状況調査を実施する(チャレンジ、以下同)
7.危険性薬物の曝露対策がされている製品へ切り替える
8.細胞毒性薬の取り扱いと保管には訓練を受けた職員があたり、薬剤部の管理下で行う
9.細胞毒性薬の被曝の危険性と安全な取り扱い方法についての教育プログラムを策定し、実施する
10.細胞毒性薬の防護策は、そのリスクを階層化して防護策のレベルが極端に高すぎる、あるいは低すぎることがないように配慮する
11.原則として、カプセルを開ける作業や、錠剤を砕く作業を薬剤部外で行わない
12.細胞毒性薬の投与時の取扱いは、病院の全部署の共同責任事項として手順を明確にする
13.医療機関において、細胞毒性薬の漏出への対処について、標準手順を策定し、順守する
14.細胞毒性物質を含む廃棄物の分別、パック詰め、収集、運搬、保管の方法を文書化しておく
15.細胞毒性薬を投与されている患者のリネンの取り扱い手順を文書化しておく
16.職員全員が細胞毒性物質の存在と、どのような場面でも汚染の危険性があることを認識する
17.在宅療養において細胞毒性薬を取り扱う場合は、医療従事者および家族が被曝しないよう手順を明確にしておく
(2)感染症の拡散を防止する院内手順を遵守する
[目標] 医療従事者を各種感染症からまもる
[推奨対策]
1.針刺し切創事故を防止する
2.ワクチン接種および抗体価の把握