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医療事故調査実践セミナー ~航空機事故調査に学ぶ、医療関連死亡事例の調査方法 [講義編]【開催趣旨】

医療事故調査実践セミナー
~航空機事故調査に学ぶ、医療関連死亡事例の調査方法[講義編] 

【開催趣旨】

医療安全への国民の要求は非常に高くなっています。これを反映して国は昨年10月から医療事故調査制度をスタートさせました。

医療はもともと不確実であり予期しない死亡事例の発生は避けられません。
予期しない死亡事例の発生により最低二人の犠牲者が出ます。一人は患者さん自身であり、もう一人は関係した医療従事者です。多くの場合、死亡した患者さんだけが犠牲者ではありません。大事な家族を失った遺族はその後の人生において大きな悲しみを背負って生きて行かなければなりません。家族一人一人の人生そのものが大きく変わってしまいます。一方、関係した医療従事者も同様に苦しみます。その責任の重大さや無責任な周りの人の批判という重圧に耐えられず自ら命を断った関係者もいます。

重要なことは「同じことを繰り返さない」ということです。このためには、まず調査が必要です。その予期しない事態がどのように発生したのか、なぜ発生したのかの調査を行い、問題点を明らかにし、具体的対策をとらなければなりません。

調査では、(1)医学的見地からの死因究明、(2)行動科学的見地からの行動分析、そして(3)工学的見地からの工学的因果関係の解明、の3つの分析が必要です。
(1)は、行われた医療をレトロスペクティブに(過去にさかのぼって)分析し、経験を知識として共有化して、次の医療のために活かすことが重要です。
(2)の行動分析は、ある行為が結果として期待されたものと異なった結果となった場合に必要です。主にヒューマンエラーに関する分析が中心となります。エラーはなぜ起こるかについて、これまでは当事者本人の不注意や、作業に対する意識の低下など個人の問題と考えられてきました。しかし、結果的にある範囲から逸脱してしまった行為を実施した当事者だけに問題があるのではなく、その背後には「表示が見づらい」「マニュアルが分かりにくい」「コミュニケーションの不足」など、エラーを誘発させる環境要因が存在することにも着目し、再発防止を考えなければなりません。
(3)は、ある医療機器が破損した場合、その予期しない破損がなぜ引き起こされたのかを工学的な因果関係で分析しなければなりません。その原因を明らかにすることにより、新しい医療機器の設計基準や製造過程の改善、あるいは機器の運用時の留意点などの知見が得られます。得られた知見をこれからの医療に活かすことができれば、次の不幸な事態の発生を少なくすることができます。

医療システムをどのようにすれば低リスクのシステムに改善できるか、この目的を達成するために参考となるのが航空界の取り組みです。
1960年代、民間航空機が100万回離陸すると、数十機は再び飛行場に着陸することができませんでした。飛行機は危険な乗り物だったのです。しかし、1970年代になるとこの数は数機に激減しました。今日では1機未満の低い比率となっています。

なぜ、航空機のリスクは激減したのでしょうか。
それは、「同じ事故を繰り返さない」という目的のために科学的な事故調査を行い、再発対策を考え、それを世界中で協力して実行してきたからです。この具体的に事故の発生を激減させた航空業界の調査方法は、医療の予期しない死亡事例の調査に大いに参考となることは間違いありません。
そこで、医療安全に関心のある有志で、航空事故調査に学ぶ医療関連死亡事例調査について研究を重ねています。この研究成果を共有し、よりよいものへと改善するためにセミナーを企画しました。多くの方に参加していただきたいと思います。

企画責任者:河野龍太郎(自治医科大学医学部メディカルシミュレーションセンター
センター長、医療安全学教授、
東京女子医大理事長特別補佐(医療安全・危機管理担当))

 

 

 

 

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