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2016年5月6日 病院管理者研修会

病院管理者研修会「医療安全の向上を目指すトップマネジメントの責任と役割」のご報告

5月6日に病院管理者研修会「医療安全の向上を目指すトップマネジメントの責任と役割」が聖路加国際大学のアリス・C・セントジョン メモリアルホールで開催されました。4人の先生方にそれぞれのお立場から講演していただきました。会場では病院長、副院長はじめ看護師長、医療安全担当部署のトップの方々など約120名の参加者が熱心に聴講され、活発な質疑応答が行われました。

 ■講演1:木村壯介先生(日本医療安全調査機構 常務理事)
「管理者の条件として、事故への対応、必要なスタッフからの信頼と安心

講演のはじめに「医療事故調査制度」成立までの経緯を、明治期までさかのぼる歴史的背景から近年の状況まで概観され、そのうえで、この制度の根幹となる考え方・理念を明確に示されました。次いで、制度施行後の状況を説明された後、この制度の要点として、「医療事故」の定義・判断、「院内事故調査」の手続き、事故調査の進捗に応じた支援団体の役割、医療事故調査・支援センターの制度上の位置付け等を具体的に解説されると共に、医療事故への対応のポイントとして、平時の備えと事故発生後の対応について、管理者のあり方を中心にわかりやすくまとめられました。最後にインフォームドコンセントの重要性を改めて強調され、医療事故調査制度は「信頼」を基盤とした制度であり、多くの関係者の連携や社会からの支えを必要としているので協力してほしいと締めくくられました。

講演2:河野龍太郎先生(自治医科大学メディカルシミュレーションセンター センター長、医療安全学教授)
「医療のリスク低減に向けて組織のリーダーに期待すること」

医療安全に関して、組織のリーダーとしてはまず現状を理解することが必要であるとして、医療システムの特徴と問題点を航空業界や原子力産業と対比して示され、続いてヒューマンエラーが発生するメカニズムと行動分析の手法を講義されました。これを踏まえて、医療現場のリスクを低減するための具体的な方策として、今回の事故調査制度を「発生した医療事故から学ぶ手段」と位置づけ、平時から潜在的なリスクをキャッチするためのアプローチとして「安全文化はエンジニアリングできる」という考え方を紹介されました。最後に強調されたのは、リーダーにとって大事なことは「人の意見に耳を傾ける」こと。ネガティブな情報を聴こうとしないリーダーは、正しい情報を得ることができない、と組織管理者のあり方について一刀両断されました。

 ■講演3:嶋森好子先生(東京都看護協会 会長)
「定められたことが確実に実施される仕組みをどう作り上げるか」

ここ数年の医療安全情報一覧を示され、繰り返し起きている医療事故事例の多いことを指摘され、看護管理者に期待されていることとして、「安全が確保されたプロセスにそった業務手順が組織として整えられているか」、「外来・入院・検査等いずれの場面でも使える手順になっているか」、「安全を優先する組織文化が育っているか」の3点について、常に鑑査・監督を行い、いずれも適切に行われていることを確認(モニタリング)し 、不十分な点については継続して改善を行う仕組みができているかを点検することが急務であるとして、その進め方について、各地でこれまで開催されてきた医療安全管理者ネットワーク会議の内容を中心に紹介されました。医療安全管理者の研修が着実に進んでいることが感じられる講義でした。最後に、安全な組織づくりには、①トップが決断する、②チームを作る(関連部署の、腰が軽く、よく働く人材を集める)、③チームの目標を明確にする、④目標達成のためのプロセスと期限を決める、⑤プロセスを確実に実施する方法を明確にする、⑥評価の基準を決め、⑦定期的に評価して成果を確認し、次の目標を決める、⑧以上の経過を繰り返す、ことを強調して講演を締めくくられました。

 講演4:石川清先生(名古屋第二赤十字病院 院長)
「医療安全文化醸成のために~メディエーション・コーチングを病院の風土に!」

医療におけるメディエーションとは、対話の促進により医療者・患者間の関係再構築を支援すること、コーチングとは相手の自発性を引き出して目標達成を支援することであり、どちらにもコミュニケーション・スキルが必要であること、医療事故の2/3はコミュニケーション不足が原因であることから、名古屋第二赤十字病院では、病院長の英断により、コーチング研修を導入し、医療事故ゼロをめざしていることが紹介されました。メディエーションやコーチングの優れた面と、それをどのように院内に取り入れていくかを、時にユーモアを交えながら情熱的に語られました。指示命令型の従来のリーダーシップに対し、今、医療界に必要なのは部下が協調して自律的に動くコーチ型のリーダーシップであり、多くの病院に普及することを願っていると締めくくられました。

この後、参加者からは、新事故調査制度施行に伴う現場のジレンマについての発言とともに数多くの質問が寄せられましたが、講師の先生方には、それぞれの質問に言葉を選びながら丁寧に答えていただきました。

 

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